別居中に支払う婚姻費用を抑えたい!減額する方法はある?

代表弁護士 染川 智子 (そめかわ さとこ)

夫婦には,生活保持義務(自分の生活と同程度の生活を相手にも保持させる義務)があります。ですから,別居後も,生活費の支払い義務が認められるのですが,その金額は,一律ではありません。

場合によっては,請求された金額を少なからず下げることができるかもしれないのです。

この記事では,婚姻費用の金額はどのように決まるのか,どのようなケースで減額が出来得るのかについて,説明します。

婚姻費用算定表を超えた高額な請求には必ずしも応じる必要はない

婚姻費用は,多くの場合,東京・大阪の裁判官により提案された「算定表」という表に基づいて,算定されます。算定表は,「権利者」(婚姻費用を請求できる側のことをいいます。)と「義務者」(婚姻費用を支払う義務を負う側のことをいいます。)の収入,子供の人数と年齢を当てはめて,利用します。

なお,多くの場合には,夫が義務者になることがおおいため,この記事では,これ以降,わかりやすいように,義務者を夫,権利者を妻として,説明していきます。

この算定表は,あくまでも標準的な婚姻費用の金額を簡易迅速に算定するために用意されたものです。そのため,本来,個々の事情を考慮して最終的な金額は決まるのですが,やはり多くのケースでは,算定表の幅を大きく出るような金額の支払い義務が認められることはありません。

ですから,配偶者から,算定表の金額を超えた婚姻費用を請求された場合には,まずは,算定表以上は支払えませんと拒めばよいのであって,求められた金額で合意してしまわない方がよいといえます。

私立学校の学費の支払いは拒否できる可能性がある

算定表は,公立学校の学費を考慮して作成されています。

そのため,子供が私立学校に通っている場合には,その分を支払わなければならないのか,問題となります。

この点については,一般的に,公立学校の教育費を超える私立学校の費用を負担すべきといえるのは,“子供が私立の学校に通うことに合理性がある場合”だけであるとされています。

合理性があるといえる典型的なケースは,夫が,子供が私立へ通学することを承諾している場合です。また,明確に承諾をしていない場合でも,夫の収入や学歴などからして,子供が私立学校に通ってもおかしくないといえるような場合には,その費用を支払わなければならないこともあり得ます。

子供が私立学校に通学することを認めていたわけではない場合には,とりあえず,その分の支払いは拒絶してよいと思います。妻の側が,私立学校の費用も支払ってもらえるケースだということを説得的に説明できなければ,調停や審判においても,私立学校の費用まで負担させられることはないからです。

家賃や住宅ローンを支払っている場合は減額の可能性がある

これまで賃貸で住んでいた家に妻が残って夫が出て行ったケースなどで,夫が,妻が住んでいる家の家賃を支払い続けている場合は,夫がその分の婚姻費用を支払っていると考えることができます。

そのため,賃料分を婚姻費用の額から引くことができるのが原則です。なお,全額引くことができるかどうかは,事情によりますし,別居の原因が主に夫にあるような場合には,考慮してもらえないこともあり得ます。

それでは,住宅ローンを夫が支払い続けている場合は,どうなるのでしょうか。

この問題は,その住宅に夫が住んでいるのか,妻が住んでいるのかによって分けて考える必要があります。

まず,夫がその住宅に住んでいる場合には,住宅ローンの支払いは,資産形成の費用であり,かつ,自分の住居を確保するための費用でもありますので,婚姻費用が減額されることはありません

一方,妻が住んでいる住宅のローンを夫が支払っている場合には,そのお陰で妻が住居費の負担を免れていることになりますので,婚姻費用が減額されるケースがあります。ただし,減額されない場合も多くありますので,慎重な検討が必要になります。詳しくは,弁護士にご相談ください。

いずれにしても,自分が家賃や住宅ローンを支払っている場合には,まずその点を理由にした減額を主張してみましょう。

収入が減少した場合には減額できる可能性がある

婚姻費用の金額を一度決めた場合でも,収入の増減などの予想外の事情の変更が生じたときは,その金額を変更できることがあります。もとの合意通りに支払わせることが当事者間の公平に反する場合には合意を変更することができるという「事情変更の原則」の考え方によるものです。

したがって,予想外に収入が減収した場合には,婚姻費用を減額できる可能性があるのです。もっとも,少しの減収では考慮されないこともありますし,働けるにも関わらず仕事せずに減収した場合などにも減額が認められないことがあります。

一度合意した婚姻費用の金額は簡単に変更することはできない

まず,婚姻費用の金額が決まった時点で予測することができなかった事情の変更などが生じていない場合には,金額を変更するためには,再度妻との協議をもって合意を変更するしか方法はありません。金額の合意は,その金額が妥当なのかどうかきちんと判断してから慎重に判断して行わなければなりません。

一方,先ほどの説明のように,予期しない事情変更があった場合には,婚姻費用の金額を変更できる場合があります。

しかし,事情変更があったからといって当然に金額が変更されるわけではなく,法的には,当事者間の合意や審判があって初めて,変更の効果が生じるとされています。

ですから,婚姻費用を減額したいような事情が生じた場合には,妻と話し合って減額した金額での合意を再度行うか,家庭裁判所に減額調停を起こすなどをしなければなりません。妻が同意しない場合に,調停や審判を経て減額できるケースはありますが,一度決まった金額の変更は慎重に判断される場合が多く,簡単には減額できないと考えておいた方がよいでしょう。

なお,事情変更による金額の変更には,減額だけではなく,増額の場合もあり得ますので,妻から増額を要求されることもあります。

婚姻費用を請求された場合には弁護士にご相談ください

このように,婚姻費用の金額を決める際には,様々な考慮要素があります。

相手から請求された金額を支払わなければならないわけではなく,場合によっては,減額できることもあります。一度決めてしまうと,変更は容易ではありませんので,後悔しないように,初めの段階で,弁護士にご相談いただきたいと思います。

弁護士にご依頼いただければ,できるだけ有利な条件になるようにサポートします。

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