離婚前の別居 メリットと注意点

代表弁護士 染川 智子 (そめかわ さとこ)

離婚の前にまず別居をすることを選択するということはよくあります。

なんとなく別居を始めてしまう人もいるかもしれませんが,離婚問題において,別居は,様々な点で,重要な意味を持つものなのです。別居には大きなメリットもありますが,注意すべき点もあります。

この記事では,離婚の前の別居を考えている人に向けて,別居をするメリットは何か,また,注意点は何かについて,説明していきます。

別居のメリット

別居することでDVなどによる苦痛から逃れることができる

別居の大きなメリットの一つが,それまでの苦痛から解放されることです。

配偶者からのDVやモラハラに苦しんでいる場合には,別居をすることで,精神的,身体的な苦痛から解放されます。その場合には,準備を整えてできるだけ早期に別居をすることを考えた方がよいでしょう。また,そうでなくても,離婚を考えている場合には,相手との同居生活に苦痛を感じている人も多いと思います。

別居には,相手と離れて自由になれる,それ以上の精神的苦痛を受けなくても済むという大きなメリットがあります。

別居は離婚の意思が強いことを示すのにも有効

実際に別居という行動に出ると,相手に対して,離婚したいのだという気持ちが明確に伝わる可能性が高いです。

これにより,それまで本気にしていなかったような相手も,離婚の意思が固いことを認識するので,離婚について真剣に考えることになるでしょう。そのことが,離婚に向けた話し合いが進むきっかけになるかもしれません。

別居を理由として離婚が認められることがある

相手が離婚に同意しない場合に,裁判で離婚が認められるためには,法定離婚事由が必要になります。

法定離婚事由とは,民法770条1項の1号から5号に定められた事情のことですが,別居が長期化して婚姻関係が破綻していると評価されると,同条項5号の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」に当たり,離婚が認められる場合があります。

様々な事情により変わってきますので,一概には言えませんが,離婚が認められるための別居期間の目安は,3年~6年程度などと言われることも多いです。

なお,これは,有責配偶者(離婚の原因を作った側の配偶者)からの離婚請求ではない場合の目安です。不貞をした側の配偶者など,有益配偶者からの離婚請求の場合には,より長期間の別居とその他の諸条件がそろった場合でなければ,離婚は認められにくいです。

離婚前に別居する場合の注意点

一方的な別居は「悪意の遺棄」と評価される可能性もある

相手の同意のない一方的な離婚は,場合によっては,「悪意の遺棄」と評価されてしまう可能性もあるので,注意が必要です。

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