父親は親権を取れないのか?父親でも親権を勝ち取る方法はある?
「父親は親権を取れない」と言われることがあります。
たしかに,父親の親権取得は容易ではない場合も多いのですが,それには,理由があります。
この記事では,なぜ父親は親権を取れないなどと言われているのか,父親でも親権を勝ち取れる場合はあるのかについて,詳しく解説していきます。
裁判や調停において重要視されることとは?
父親も母親も親権の取得を希望して話し合いがまとまらないような場合には,調停や裁判において,親権者が決められることになります。
それでは,家庭裁判所は,どのような点を重要視して,親権者を判断しているのでしょうか。判断の際に考慮される主な要素を,次に示します。
1 父母側の事情
- 監護の意欲と能力
- 健康状態
- 経済状況
- 実家の援助
- 従前の監護状況
- 居住,教育環境
- 奪取の違法性
2 子の側の事情
- 子の年齢,性別
- 兄弟姉妹関係
- 心身の発育状況
- 子自身の意思
- 環境の変化への適応性
いずれの場合でも,未成年者である子の利益が最も優先して考慮されます(民法766条1項)。そして,中でも特に重要視されるのは,“継続性の原則”です。
継続性の原則とは,つまり,現状を尊重し,子どもの環境をできるだけ変えないようにすることが子の利益になるという考え方です。
親権取得は母親が有利?
かつては,子どもが小さい場合には,母親が面倒をみるのが望ましいという考え方がありました(“母性優先の基準”)。
しかし,男女平等の現代では,この点はあまり重視されなくなっています。
ですから,単に母親であるというだけで,親権取得について特別に有利というわけではないはずなのです。
しかし,やはり,現代でも,母親が主に子どもの面倒をみているという家庭が多いですから,先ほど説明した継続性の原則からすると,母親が監護しているという現状を尊重し,母親を親権者にしようという方向に傾くことが多くなるのということはいえます。
また,子ども自身も,普段一緒にいる母親のものへ行きたいという意思を示すことが少なくありません。特に子どもが大きくなってくると,子ども自身の意思が重視されるようになってきますから,この場合には,母親が親権を取得できることが多くなります。
このようなことが,母親の方が有利といわれる一番の所以であろうと思います。
父親が親権を獲得するのが難しい理由
このように,母親が親権を取りやすいケースが多いので,逆にいえば,父親が親権を獲得できるケースは少ないということになってしまいます。
やはり,父親はフルタイムで勤務していて,子どもの面倒をみる時間が母親に比べて圧倒的に少ないということが多いため,継続性の原則からすると,なかなか親権を取得するのは難しくなるのです。
また,別居した場合に,母親が,子どもを連れて行ってしまうと,さらに父親が子どもの面倒をみる機会は減り,逆に,母親と子どもの関係はより密になります。そのようになってしまうと,ますます父親が親権を獲得するのは困難になります。
したがって,子どもの面倒を母親に負けないくらいみてきたという監護実績があれば,父親が特別に不利ということではなくなってきます。親権を取得したい男性は,この点をクリアしたうえで,先ほど挙げた様々な要素において自分が親権者になることが子どものためになるということを主張立証しなければなりません。
最終的には子の利益の観点から決められる
親権者を判断する要素は様々ありますが,結局のところ,「子の利益」が基準となります。
子どものためになるのかどうかという点が一番重要なのです。
ときに,相手の問題,相手には適格性がないということばかりを指摘する場合がありますが,それだけでは親権を取得するのは難しいです。相手を激しく非難することは,逆効果になることさえあります。
まずは,自分が親権を取得することが,子の利益になるということを主張しなければなりません。
親権を取れないとしても面会交流の取り決めはしておく
親権を取得できず,相手が子どもを引き取ることになったとしても,子どもと会えなくなるわけではありません。
子どもを監護していない方の親が子どもと面会や電話,メールなどで交流を行う「面会交流」というものがあるのです。
親権者になれない場合には,面会交流についてきちんと取り決めをしておきましょう。話合いがまとまらない場合などには,家庭裁判所に調停や審判を申し立てて,面会交流に関する取り決めすることもできます。なお,面会交流は,離婚後だけでなく,別居中にも行うことができます。
面会交流について決める際にも,「子の利益」が最も優先されます。
親権を取得したい男性は早めにご相談ください
以上のように,正直,父親が親権を取得するのは容易ではありません。
しかし,取得できるケースがないわけではありませんので,あきらめずにまずは弁護士にご相談ください。
なお,子どもと別居してしまうと親権の取得はますます困難になりますので,離婚の行動に踏み切る前の段階で,早めに一度ご相談いただいて,対策のアドバイスを受けることをおすすめします。